9.11 その時、私はバンクーバーにいた!

9.11 その時、私はバンクーバーにいた!

  2001.9.11、あの忌まわしいアメリカ同時多発テロ発生の日、私はバンクーバーにいた。ちょうど20年前です。親友のCBC出身のKさんの誘い、「海外へ行くなら観光だけでなく目的をもっていかない?」それまで、彼女とは数回海外旅行をしていましたが、今回の誘いには少々戸惑いました。カナダのバンクーバーに一か月滞在して英語を学ぶというシニアのための滞在型スクール「CIC カナダ・インターナショナル・カレッジ」です。その頃私はすでにMBSを定年退職した後で、大阪民事調停委員をしていました。まず、大阪で開かれた説明会に行き、何とか調停の仕事も欠勤可能との許しもいただき、思い切って参加することになりました。「いまさら英語の勉強?」「一か月も家を空けるの?」すでに夫は3年前に身罷っていました。

 CICカナダ国際大学企画のシニア対象のこのプログラムには、英語の勉学と異文化体験の2コースあり、大学が休みの夏・春などを利用して学生寮に滞在、私たちは10期生である。一回につき全国から60人ばかりのシニアが参加、10期生は関西組が25人ほど関東組を合わせると計67人が今回のグループであった。女性46人、男性15人、ご夫婦が3組。ほとんどがご主人を日本に残しての参加、中には2回目3回目の方もおられた。キャンパス内にある寮の一人一部屋与えられ、月~金は勉強、もちろん先生は地元の外人、土日はいろんなコースから選んで一泊旅行に出かける。クラス分けは初日に面接で決められる。異文化を選択した人たちは、主に町へ出かけての体験学習が多かったらしい。英語組も、午後は、博物館や老人ホーム、ピクニック、ネイチャーウオーク、ホームビジット、などなどアクティビティのスケジュールがぎっしり、宿題もある。学園祭に相当するカレッジデ―、ネイティブの人との交流会、コンサート鑑賞、一泊の卒業旅行もあった。卒業間近には自分たちが作った英語の脚本でコント風の芝居もした。

 小旅行は、まず着いた週末の土曜日にバスでシアトルへ出かけた。そして次週の火曜日の朝、テロが起こったのだった。朝の授業中に事務局の人が事件を伝えに来た。「え?いったい何が起こったの?」授業が終わるや否やテレビにかじりついたが、何しろニュースの英語なんてほとんど理解不能の情けなさ。今頃シアトルにいたら国境閉鎖になって路頭に迷っていたかもしれないね!

 バンクーバーの街には半旗が翻り、空港では厳しいチェックが入り、コンサートのコンダクターは演奏前に犠牲者を悼むメッセージを述べ、もちろんテレビは連日のニュース、日本から来ていた新聞が途絶え、今頃日本にいたらもっと情報が入っていたのにと、不安な毎日が続いた。

 それはさておき、このCICでの体験で私は同級生たちから、大きな財産をいただいた。

 殆どの人が、それぞれ一人参加で、パワフル、やる気一杯、活力にあふれ、友好的!肝心の英語の実力は期待するほど上達はしなかったが・・・私は帰国後、今からでも何でも出来るのだと、いろんなことにチャレンジした。大阪組の有志と英語を学び始め、個人でもレッスンを開始、もちろん調停にも復帰、ピアノ(挫折)料理・ケーキ教室、ジャズ歌唱、バレエ、声楽、社交ダンス・・・今でもこの時の同級生とは交流が続いている。その後また海外へ行き語学を続けている人、英語のボランティアをしている人、東京組もグループで勉強を始められたし、同窓会旅行も。あれから20年、亡くなられた人もいるし、様々な人生を送っている。でもたった一か月とはいえ、貴重な稀有な体験だった。

 上村十三子(MBS)

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